ユングの神経症体験

ユング神経症体験

 ユングは十二歳のころ、学校で数学、図画、体操の授業に挫折する日々を送っていた。そしてその年の初夏のある日、友人を待っていたところ、ある別の少年から突然突き飛ばされ、足を滑らし頭を打ってしまう。

 その瞬間、ユングの脳裏には「もう学校にはいかなくても良い」ということが浮かんだという。それ以降、ユングは学校の帰り道や、両親が勉強をさせようとすると決まって神経症的発作を起こすようになった。そして、結局半年にわたって学校を休むことになる。いわゆる不登校である。

 そんなある日、父親の友人が家に訪ねてきて「ところで息子さんはどうですか」と会話をしている場面に遭遇する。父親は「医者は原因がわからないと言っており、今後自分で生計を立てていけるのか心配です」と受けごたえしているのを耳にした。

 その時、ユングは半年に渡って不登校の夢のような生活にいたところから一気に現実に戻された。「働かなくてはいけない」という思いが湧いてきたという。そして、父親の書斎に行き、ラテン語の文法書を取り出して一心不乱に勉強をし始めた。

 しかし、いつものように神経症的発作が起こる。そしてさらに勉強を続けるとまた発作が起こる。それでも我慢し続け発作の襲来に耐えながら何とか勉強しているとそれ以来、神経症は消えてしまった。ユングはその時に神経症というものがどのようなものかを理解するようになった。

 

ユング自伝 1―思い出・夢・思想

ユング自伝 1―思い出・夢・思想