なぜ悩むのか

その答えは簡単である。

自分という存在の内面を概念化して、そこに「こうなりたい」という理想の形を思い描くからだ。

しかし、あくまでそれは自分を自分の頭でイメージした概念でしかないから、つかみどころのない心の世界に翻弄され、自己不全感は更に強化されてしまう。

つまり永遠に終わることのない、「自分」対「自分」の戦いの始まりである。

だからよく、自分の心を変えるとか、決心するとかいうが、それがいかに浅はかな計らいであるかに気づいていない。心は自分の力で変えられないのだ。

自己の内面の工夫から離れ、外の対象に向かって努力するときのみ、自然に心は整っている。

人間だけに悩みがあり、動物に悩みがないのはそのためだ。動物は知性を使って内面の改善など考えないからだ。